法人の決算は自分でできる?やる場合のリスクと税理士に頼む境目
公開日:2026年10月24日(最終更新:2026年10月25日)
税理士に頼まず、法人の決算と申告を自分でやれないか。設立したばかりの会社や、売上がまだ小さい会社の経営者から、よく受ける相談です。
結論からいうと、自分でやることは法律上できます。ただ、個人の確定申告とは作る書類の量と性質がまったく違い、ミスをしたときの影響も大きくなります。この記事では、法人の決算を自分でやる場合に何が必要で、どこにリスクがあるのか、そして税理士に頼んだ方がよい境目はどこかを、年間300件を超える法人の決算を扱っている立場から整理します。
法人の決算・申告は自分でやってもよい
法人税の申告書は、税理士に依頼しなければ出せないものではありません。代表者が自分で作成して提出することは認められています。税理士でない人が、他人の申告書の作成を業として(有償・無償を問わず、反復継続して)行うことは税理士法で禁じられていますが、自社の申告を自社で行うことは問題ありません。
実際、取引が少なく、会計の知識がある経営者であれば、自分で申告している会社もあります。問題は「できるかどうか」ではなく、「かける時間とリスクに見合うかどうか」です。
自分でやる場合に作る書類
法人の決算・申告で作る書類は、おおむね次のとおりです。個人の確定申告書が数枚で済むのに比べると、量も種類も多くなります。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表) | 1年間の帳簿を締めて作る会社の成績表 |
| 法人税の申告書(別表一、別表四、別表五(一)など) | 決算書の利益を税法上の所得に直し、税額を計算する |
| 勘定科目内訳明細書 | 預金・売掛金・借入金などの内訳を一覧にする |
| 法人事業概況説明書 | 事業の内容や月ごとの売上などを記載する |
| 地方税の申告書(法人事業税・法人住民税) | 都道府県と市区町村に提出する(東京23区内は都税事務所のみ) |
| 消費税の申告書(課税事業者の場合) | インボイス登録をしている場合などに必要 |
申告書は国税(税務署)と地方税(都道府県・市区町村)で別々に提出します。電子申告なら国税は e-Tax、地方税は eLTAX を使います。
自分でやるときにつまずきやすい4つの点
1. 決算整理の仕訳
日々の入出金を帳簿に付けているだけでは決算になりません。減価償却、未払費用や前払費用の計上、売掛金・買掛金の締め、棚卸資産の計上など、期末にだけ行う仕訳があります。ここが抜けると、利益そのものが正しくありません。
2. 会計の利益と税金の所得のずれ
法人税は、決算書の利益にそのまま税率をかけるわけではありません。交際費の上限、役員報酬の扱い、減価償却の限度額、法人税等の納税額の扱いなど、会計と税法で取り扱いが違う項目を別表四で調整します。当事務所が見てきた範囲では、この調整の漏れが申告ミスの中で特に多い部分です。
3. 役員報酬と役員との取引
役員報酬は、事業年度の途中で金額を変えると、変えた部分が損金(経費)にならないことがあります。また、社長個人と会社の間のお金の貸し借りや、社長の個人的な支出を会社の経費にしているケースは、税務署が特に注目する点です。
4. 青色申告の要件と期限
法人税の申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。期限を過ぎると、納める税額がある場合は延滞税がかかり、無申告加算税が課されることもあります。さらに、2事業年度続けて期限内に申告書を提出しないと、青色申告の承認が取り消されることがあります。青色申告でなくなると、その事業年度以後に生じた赤字(欠損金)を翌期以降に繰り越して将来の所得と相殺することができなくなります(それまでに青色申告で生じた欠損金は、申告を続けていれば引き続き控除できます)。
1期目を自分で申告し、2期目に税理士へ依頼したところで、1期目の減価償却の計上漏れや、役員報酬の途中変更が見つかることがあります。減価償却の漏れは後からさかのぼって経費にすることができず、役員報酬の途中変更のように所得を少なく申告していた場合は修正申告が必要になります。結果的に最初から頼むより手間も費用もかかることがあります。
税理士に頼んだ方がよい境目
次のどれかに当てはまる場合は、自分でやるより税理士に頼んだ方が、時間とリスクの両面で得になることが多いです。
- 帳簿をまだ付けていない、または付け方に自信がない
- 仕訳の件数が年間で数百件を超える
- 消費税の課税事業者になっている(インボイス登録をしている)
- 役員報酬を払っている、または社長と会社の間でお金の出し入れがある
- 固定資産(パソコン、車両、設備など)を買った、売った
- 不動産の売買や賃貸がある
- 申告期限まで1か月を切っている
- 前期の申告に不安がある
反対に、売上がほとんどない、取引が年間数十件程度、役員報酬なし、消費税は免税、会計の知識がある、という条件がそろっていれば、自分でやる選択肢も現実的です。
自分でやる場合と頼む場合の比較
| 自分でやる | 税理士に決算だけ頼む | |
|---|---|---|
| 費用 | 申告ソフト代程度 | 数万円〜(帳簿の状態と規模による) |
| かかる時間 | 慣れていなければ数十時間 | 資料をそろえる時間のみ |
| ミスのリスク | 自分で負う | 専門家が確認する |
| 税務署からの問い合わせ | 自分で対応 | 税理士が対応できる |
経営者の時給を考えると、慣れない申告に数十時間かけるより、その時間を本業に使った方がよいという判断も十分にあり得ます。
決算だけを頼むという選択肢
税理士に頼むというと、毎月の顧問料がかかるイメージがあるかもしれません。最近は、顧問契約を結ばず、年1回の決算と申告だけをスポットで引き受ける事務所も増えています。
当事務所も、法人の決算・申告をスポット・オンラインでお受けしています。基本料金は35,000円(年商500万円以下の法人)で、年商や仕訳の件数、消費税申告の有無に応じた加算方式です。帳簿がまだできていない会社、自分で申告してきたが今年は頼みたい会社、申告期限が近い会社からのご相談も多く、これまでの累計は1,000件を超えています。
加算の項目と金額は、料金表に一覧があります。
法人の決算・申告だけ、オンラインで。
基本料金 35,000円〜(年商500万円以下)。累計1,000件超。帳簿がまだでも相談できます。
無料で見積もる1営業日以内にご案内。しつこい営業はしません。
費用の相場については「法人の決算だけ税理士に頼むといくら?顧問契約なしの費用相場」で詳しく整理しています。
よくある質問
1期目は自分で申告して、2期目から税理士に頼むことはできますか?
できます。その場合、2期目の担当税理士が1期目の申告書と決算書を確認し、期首の残高を引き継ぎます。1期目に誤りが見つかった場合は、修正申告や更正の請求で直すことになります(ただし減価償却の計上漏れなど、さかのぼって直せないものもあります)。
赤字なら申告しなくてもよいですか?
いいえ。法人は赤字でも申告が必要です。赤字でも法人住民税の均等割はかかります。また、赤字を翌期以降に繰り越すには、赤字が出た事業年度を青色申告で申告し、その後も毎期続けて申告していることが条件です。期限に遅れると青色申告の承認が取り消されるおそれがあるため、期限内の申告が重要です。
自分で作った申告書を、提出前に税理士に確認だけしてもらえますか?
事務所によっては申告書の確認だけを引き受けるところもありますが、確認の範囲や責任の所在があいまいになりやすいため、決算・申告をまとめて依頼する方が結果的に確実です。
法人の決算・申告は自分でやることもできますが、決算整理、会計と税法のずれの調整、役員との取引、期限と青色申告の管理など、個人の確定申告にはない論点が多くあります。帳簿がない、取引が多い、消費税がある、役員報酬がある、期限が近い、といった条件に当てはまるなら、決算だけを税理士に頼む方が時間とリスクの両面で得になることが多いです。
顧問契約は不要です。全国どこからでも、来所なしで法人の決算から電子申告までお引き受けします。
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